古代→
平安時代→
中世→
江戸時代→
明治時代→
現代
古代:官寺(かんじ)・定額寺(じょうがくじ)・国分寺・国分尼寺など
最上位:大官寺・中位:国分寺、国分尼寺・下位:定額寺
- 官寺(かんじ)とは、国家の保護や監督を受けながら、その見返りに経済的な支援や特権を与えられた寺院のことです。私的な信仰に基づく「私寺」とは区別され、国家や天皇の安泰(鎮護国家)を祈る役割を担いました。
定額寺が「官許を得た私立寺院」であるのに対し、官寺は「完全な国営寺院」という位置づけになります。
官寺の主な種類
1.大官寺(官大寺): 中央の国家寺院(最上位) 国家が造営・維持を行う巨大寺院 鎮護国家・国家仏教の中心 僧綱による中央統制 食封・寺田など強力な経済基盤
2.国分寺・国分尼寺:聖武天皇の詔により、日本全国の諸国に国家鎮護のため置かれた寺院。
3.定額寺(じょうがくじ):私寺のうち、朝廷から一定の封戸や経費を認められた準・官寺。
4.有食封寺(うじきふうじ):国家から食封(税収を得る権利)を支給されていた寺院。
- 1.『延喜式』にみえる主な大寺(官大寺の代表例)
・大安寺(大官大寺)(奈良県): 天皇の寺として最上位とされた筆頭官寺。
・薬師寺(奈良県): 天武天皇(40代)の発願により建立。
・本元興寺飛鳥寺(法興寺)(奈良県)日本最古の本格的寺院。① 法興寺(ほうこうじ)596年の創建時の正式名称。「仏法が興る寺」という意味で名付けられました。② 飛鳥寺(あすかでら)法興寺が「飛鳥」の地にあったため、人々が親しみを込めて呼んだ通称(現在の正式な呼び名でもあります)。③ 本元興寺(ほんがんごうじ)奈良時代(710年以降)に、お寺の機能が平城京へ引っ越し、名前が「元興寺」に変わりました。その際、引っ越さずに飛鳥の地に残った元の飛鳥寺のことを、新京の元興寺と区別するために「本(もとの)元興寺」と呼びました。
・弘福寺(川原寺)(奈良県): 飛鳥時代の重要寺院(現在は廃寺・跡地)。
・東大寺(奈良県): 聖武天皇(45代)が国分寺の総本山(総国分寺)として建立。
・興福寺(奈良県)
・西大寺(奈良県): 称徳天皇(48代)の発願による官寺。
・元興寺(奈良県)
・東寺(教王護国寺)(京都府): 平安京の正門(羅城門)東側に国家が建立した官寺。後に空海へ賜与。
・西寺(京都府): 羅城門西側に東寺と対で建立された官寺(現在は廃寺)。芥川龍之介の小説の羅生門モデルになった羅城門
・四天王寺(大阪府)
・法隆寺(奈良県)
・新薬師寺(奈良県)
- 2.国分寺(こくぶんじ)とは、奈良時代741年に聖武天皇の命で全国に建立された「国分寺・国分尼寺」制度の中で、各国(旧国)に置かれた国家的寺院の総称。
- 3.定額寺(じょうがくじ)は、平安時代初期の日本において、官寺(大寺・国分寺など)に次ぐ高い格式を与えられた私立・官許の寺院です。主に『日本三代実録』などの六国史にその名が記録されています。
代表的な定額寺一覧(律令国別)
1. 畿内・南都の主要な定額寺
・唐招提寺 奈良県鑑真和上のために造営。810年に定額寺に指定。
・法隆寺 奈良県飛鳥時代からの大寺。平安時代初期に定額寺として管理。
・西大寺 奈良県孝謙上皇の発願。奈良の南都七大寺の一つ。
・東大寺 奈良県奈良市 南都の大寺
・興福寺 奈良県奈良市 法相宗の大寺
・元興寺 奈良県奈良市 南都七大寺
・大安寺 奈良県奈良市 南都七大寺
・薬師寺 奈良県奈良市 南都七大寺
2. 地方の主要な定額寺地方豪族が建立した私寺が、国家の鎮護や地方支配の拠点として定額寺に昇格しました。
・鹿島寺(根本寺)茨城県鹿島神宮の神宮寺として定額寺に指定。
・香取寺 千葉県香取神宮の神宮寺。東国の重要拠点。
平安時代:勅願寺(ちょくがんじ)御願寺(ごがんじ)門跡寺院(もんぜきじいん)大寺・諸寺(一般寺院)など
1.
門跡寺院(もんぜきじいん): 平安末期に誕生。皇族が入る「
宮門跡」や摂関家が入る「
摂家門跡」があり、寺格として最高位に位置づけられました。
2.
勅願寺(ちょくがんじ): 天皇の命令(勅命)で建てられた国家祈願の最高峰(延暦寺、東寺など)。
3.
御願寺(ごがんじ): 天皇・上皇が個人・皇室の安泰のために建てた最重要寺院(法勝寺などの六勝寺)。
4.
大寺・諸寺(一般寺院): 地方の国分寺や、民間の貴族・武士が建てた寺院。
主な宮門跡(皇族・親王が入寺した寺院)
- 天台宗(主に延暦寺・園城寺系)
・青蓮院門跡(しょうれんいん)(粟田御所)(京都市東山区):天台宗三門跡・五門跡の一つ。
・三千院門跡(梶井門跡)(さんぜんいん)(京都市左京区大原)天台宗三門跡・五門跡の一つ。
・妙法院門跡(みょうほういん)(京都市東山区)天台宗三門跡・五門跡の一つ。
・円満院門跡:滋賀県の大津(三井寺の旧塔頭)に属した門跡。
・曼殊院門跡(まんしゅいん)(京都市左京区一乗寺)菅原道真の系譜に連なる寺院として始まり。
・毘沙門堂門跡(びしゃもんどう)(京都市山科区)平安初期に創建。
・輪王寺門跡(日光山・東叡山寛永寺)(りんのうじ)(栃木県日光市): 東叡山寛永寺・日光山を統括した。
- 真言宗(皇室との結びつきが強い)
・仁和寺(にんなじ)[京都市右京区] 宇多天皇が出家して入寺(御室)した、宮門跡の始まり(最初の門跡寺院)とされる名門。
・醍醐寺 (だいごじ)三宝院門跡 京都 真言宗醍醐派の中心。874年創建 醍醐天皇の勅願寺
・勧修寺(かじゅうじ)[京都市山科区] 醍醐天皇の発願で創建され、代々親王や法親王が入寺しました。
・東寺(とうじ)長者(ちょうじゃ)(教王護国寺) 京都 空海に下賜。真言密教の中心
・大覚寺(京都・嵯峨)— 真言宗大覚寺派大本山。嵯峨天皇の離宮を寺院としたもので、歴代の門跡に皇族・公家が多く就きました。
・随心院(京都・山科)— 真言宗善通寺派の大本山。門跡寺院として皇族・公家ゆかりの歴史があります。
・泉涌寺(京都・東山)— 皇室との関係が非常に深く、「御寺(みてら)」と呼ばれます。真言宗泉涌寺派総本山です。
主な摂家門跡(せっけもんぜき):五摂家(近衛・九条・二条・一条・鷹司)や上級公家(清華家など)の子弟が入寺して代々住職を務めた門跡寺院です。 皇族が入寺する「宮門跡」に次ぐ極めて高い格式を誇り、歴史的に有名な主な摂家門跡には以下のような寺院があります。
- 天台宗系の主な摂家門跡
江戸時代の門跡制度では、五摂家から入室する寺を「摂家門跡」としましたが、天台宗の主要な門跡寺院は、現在の分類では主として宮門跡・旧宮門跡系に位置づけられます。門跡制度そのものも明治4年(1871)に廃止されています。
天台宗の京都五箇室門跡です。
・妙法院
・三千院
・青蓮院
・曼殊院
・毘沙門堂 - 真言宗系の主な摂家門跡
・醍醐寺 三宝院(さんぼういん)[京都市伏見区]醍醐寺の総本坊。宮門跡 / 摂家門跡 醍醐寺の塔頭。朝廷・摂関家との関わりが深く、のちに宮門跡としても位置付けられた。
・ 随心院(ずいしんいん)[京都市山科区]「小野門跡」とも呼ばれます。九条家をはじめとする摂関家との結びつきが非常に強く、門跡寺院として独立した高い格式を保ちました。
・勧修寺(かじゅうじ)[京都市山科区]「山階門跡」と呼ばれます。 宮門跡 / 摂家門跡 皇室や藤原氏と深いゆかりを持ち、法親王のほか摂関家子弟も多く入寺。
尼門跡(摂家・公家出身の女性が入寺した寺院)
- 摂関家や大臣家などの姫君が出家して入った「尼門跡寺院(比丘尼御所)」も摂家門跡の重要な一部です。
・宝鏡寺(ほうきょうじ)[京都市上京区](百々御所)
・霊鑑寺(れいかんじ)[京都市左京区](谷御所)
・光照院(こうしょういん)[京都市上京区](常盤御所)
天皇・上皇などの発願(勅願)によって建立されたり、国家安穏・皇室の安泰などを祈る寺として朝廷から特別に保護された寺院.。
・
薬師寺 奈良市 天武天皇・持統天皇 天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を願って発願
・
東大寺 奈良市 聖武天皇 大仏造立を中心とする国家鎮護の寺院
・
延暦寺 大津市 桓武天皇・最澄 国家鎮護の道場として朝廷から厚く保護された
・
清水寺 京都市 桓武朝期から皇室・朝廷の崇敬 後世、歴代天皇の祈願寺としても発展
・
仁和寺 京都市 光孝天皇・宇多天皇 宇多天皇が出家して御室と称し、皇室ゆかりの寺院となる
・
醍醐寺 京都市 醍醐天皇 醍醐天皇の帰依を受け、皇室・朝廷と深く結びつく
・
園城寺(三井寺) 清和天皇・智証大師(円珍)
天台寺門宗の総本山。
・
東寺 (教王護国寺) 嵯峨天皇 平安京鎮護のために
空海へ下賜された、真言密教最初の根本勅願寺。
・西寺 桓武天皇が平安京に建立した官寺。東寺と対をなす(廃寺)
・
神護寺(京都) 和気清麻呂 / 嵯峨天皇 空海が真言宗立宗の礎を築いた寺院。高雄山に位置する早期の勅願寺。
・
平等院 宇治市 藤原頼通・後冷泉天皇期 皇室・摂関家と深い関係を持つ寺院
・
西教寺 天台真盛宗総本山。勅願寺としての由緒を持つ
・石山寺(滋賀県) 聖武天皇の勅願 観音信仰の中心寺院として勅願が重ねられる
・観世音寺(福岡) 天智天皇 母親(斉明天皇)の追善のために建立。九州の祈祷・戒壇の拠点となった勅願寺。
・
南禅寺 京都市左京区
臨済宗 亀山法皇
・太山寺(兵庫県) 元正天皇の勅願
・
善光寺 長野県長野市 無宗派 皇極天皇
・
青岸渡寺(那智山) 推古天皇の勅願 熊野信仰と結びつく天台系の勅願寺
・長久寺(滋賀) 後三条天皇の勅願
真言宗豊山派
・
宝厳寺(竹生島) 聖武天皇の勅願
真言宗の聖地として知られる
天皇や上皇、皇后などが個人や皇室の安泰、後世の往生(成仏)のために個人的に発願して建てた最重要寺院です。 平安時代中期から院政期にかけて隆盛を極め、膨大な荘園が寄進されて政治・経済の中心地となりました。
勅願寺(天皇の祈願寺)より一段下ですが、門跡寺院と重なることが多く、王朝国家の宗教制度の中心を形成します。
・
延暦寺(えんりゃくじ) 滋賀県 桓武天皇・嵯峨天皇など 788年創建 勅願寺+御願寺の両性格
・
仁和寺(にんなじ)京都府 宇多天皇 888年 皇族が代々門主 勅願寺+御願寺の最高格式
・
神護寺(じんごじ):和気氏の私寺を、桓武天皇の勅願(国家的な祈願)により事実上の御願寺とした寺院。
・
醍醐寺(だいごじ)三宝院 京都府 醍醐天皇・皇室との関係 874年創建 真言密教の中心 御願寺として国家祈願を担う
・
東寺(とうじ/教王護国寺) 京都府 桓武天皇の御願に由来 8~9世紀 勅願寺だが、平安後期に御願寺的性格が強まる
・
薬師寺(やくしじ) 奈良県 天武天皇 680年発願 奈良時代は大官寺 平安期に御願寺的性格が強まる
・
東大寺(とうだいじ) 奈良県 聖武天皇 8世紀
・観心寺(大阪府)嵯峨天皇・嵯峨皇太后など 9世紀
・
金剛峯寺(和歌山県) 嵯峨天皇の御願に関係 9世紀
・
平等院 藤原頼通 父・道長の別荘を寺に改めた極楽浄土の象徴。阿弥陀堂(鳳凰堂)が現存。
・元慶寺(京都府) 陽成天皇 877年頃
・法成寺 藤原道長 道長の建立。御堂関白の象徴
・法界寺 日野資業 日野氏ゆかりの寺院
・法成寺 藤原道長 道長が栄華の絶頂期に建立した巨大寺院。「木仏寺」とも呼ばれた(現存せず)。
「四円寺」(しえんじ)円融天皇の「円融寺」や一条天皇の「円教寺」など、平安中期の歴代天皇が建立した4寺。・円融寺 ・円教寺 ・円乗寺 ・円宗寺
「六勝寺」(ろくしょうじ)白河天皇の「法勝寺」や堀河天皇の「尊勝寺」など、院政期の歴代天皇・中宮が建立した6寺。 ・法勝寺 ・尊勝寺 ・最勝寺
・円勝寺 ・成勝寺 ・延勝寺
4.大寺・名刹
官寺・勅願寺・門跡のような明確な全国統一の寺格ではありません。 「大寺」は規模・寺勢・国家や皇室との関係などから特に重要な寺院、「名刹」は歴史・由緒・文化財・宗教的影響力などから著名な古寺を指す、一般的・歴史的な呼称
*南都七大寺
・
東大寺 奈良 奈良時代からの大仏殿を擁し、平安時代も朝廷からの強い庇護を受け続けました。
・
興福寺 奈良 藤原氏の氏寺。「南都」の筆頭として大和国の実質的な領主となり、
延暦寺と並ぶ最強の僧兵勢力を誇りました。
・
薬師寺 奈良 仏教の学問や戒律の中心地として、平安時代も格式高い大寺として維持されました。
・
大安寺 奈良 大寺 南都七大寺
・
元興寺 奈良 大寺 南都七大寺
・
西大寺 奈良 大寺 南都七大寺
・
法隆寺 奈良 古刹・大寺
聖徳太子ゆかり
*平安京の大寺
・
東寺 京都
空海に下賜された
真言密教(東密)の根本道場。平安京の鎮護国家を担う国家第一級の勅願寺です。
・西寺 京都 官寺 平安京の西側官寺
・
唐招提寺 奈良 古刹
鑑真開創・
律宗
・
延暦寺 滋賀
最澄が開山。平安京の鬼門を守る最高の勅願寺であり、
天台宗の総本山。
・
園城寺(三井寺) 滋賀
天台宗寺門派の総本山。延暦寺(山門派)と激しく対立し、何度も焼き討ちを受けながらも朝廷や貴族の保護を受け巨大化しました。
・
仁和寺 京都 宇多天皇が創建した
真言宗御室派の総本山。最初の御願寺であり、皇族が入寺する「宮門跡」の筆頭として絶大な格付けを持ちました。
・
醍醐寺 京都 醍醐天皇の御願寺。上醍醐・下醍醐に広大な伽藍を持ち、政治・密教祈禱の中心地となりました。
・
神護寺 京都 名刹
空海・
最澄ゆかり
・
清水寺 京都 坂上田村麻呂ゆかりの勅願寺。観音霊場として「清水詣」が大流行し、
興福寺の末寺としても強力な権威を持ちました。
・
平等院[京都府宇治市] 関白・藤原頼通が建立した極楽浄土を模した鳳凰堂。摂関政治の絶頂期を象徴する名刹です。
・鞍馬寺[京都市左京区] 北方鎮護の祈願所として崇められ、平安貴族たちの参詣(鞍馬詣)の地として栄えました。
・広隆寺 京都 古刹 太秦・秦氏ゆかり
・六勝寺 京都 白河上皇らが建立した八角九重塔を擁する超巨大御願寺群(現在は廃寺跡)。
中世:五山・十刹・諸山(ござん・じっさつ・しょざん)、本末制度など
武家政権(特に鎌倉幕府・室町幕府)が導入した「五山・十刹・諸山(ござん・じっさつ・しょざん)」制度は、禅宗寺院を効率よく統制・格付けするためのピラミッド型官許システムです。
本末制度(ほんまつせいど)は、江戸時代に完成したイメージが強いものの、中世(鎌倉〜室町時代)から各宗派内で自発的に形作られ始めた「本寺(大本山)と末寺(地方寺院)」の主従・血脈関係を指します。
- 中国(南宋)の五山制度を模して作られた階層構造です。室町幕府の3代将軍・足利義満の時代に「京都五山」と「鎌倉五山」の並立という形で完成しました。禅宗(臨済宗)のみ
●五山(格付け第1位〜第5位)
別格:南禅寺(なんぜんじ)— 五山の上に立つ最高寺格 亀山上皇の離宮を寺に改めた 足利義満が「五山・十刹の上」に置く 禅宗寺院の最高格式 「別格」として五山制度の頂点
・京都五山(きょうとごさん)— 全国禅宗の最高位
① 天龍寺(てんりゅうじ) 足利尊氏が後醍醐天皇の菩提のため創建 京都五山第一位 世界遺産
② 相国寺(しょうこくじ) 足利義満創建 京都五山第二位 金閣寺・銀閣寺の本山
③ 建仁寺(けんにんじ) 栄西創建 日本最初の本格的禅寺 京都五山第三位
④ 東福寺(とうふくじ) 円爾弁円創建 京都五山第四位 巨大伽藍で「大寺」的性格が強い
⑤ 万寿寺(まんじゅじ) 現存せず(廃寺) 京都五山第五位 五山制度の歴史的構成要素
・鎌倉五山(かまくらごさん)— 鎌倉幕府の禅宗官寺
① 建長寺(けんちょうじ) 北条時頼創建 日本初の本格的禅宗専門寺院 鎌倉五山第一位
② 円覚寺(えんがくじ) 北条時宗創建 元寇戦没者供養 鎌倉五山第二位
③ 寿福寺(じゅふくじ) 栄西開山 北条政子ゆかり 鎌倉五山第三位
④ 浄智寺(じょうちじ) 北条氏ゆかり 鎌倉五山第四位
⑤ 浄妙寺(じょうみょうじ) 足利氏ゆかり 鎌倉五山第五位
- ●十刹(じっさつ) 五山に次ぐ格式を持つ重要禅寺。京都十刹(等持院など)や関東十刹のほか、全国の主要な約50〜60寺が指定されました。
当初は全国から10寺が選ばれていましたが(天下十刹)、1386年に最高権力者の足利義満によって「京都十刹」と「鎌倉十刹(関東十刹)」に分けて再編されました。その後、地方の有力寺院が次々と追加を求めたため、時代とともに数は増加しました。
京都十刹 一覧(1386年制定時の順位)
・等持寺(廃寺 / 現在は等持院に合併)
・臨川寺(京都府京都市右京区)
・真如寺(京都府京都市北区)
・安国寺(廃寺 / 複数あった安国寺の総称など諸説あり)
・宝幢寺(廃寺 / 鹿王院に事実上統合)
・普門寺(廃寺 / 東福寺内にあった)
・広覚寺(廃寺)妙光寺(京都府京都市右京区)
・大徳寺(京都府京都市北区 / のちに幕府の管理を嫌い、この制度から離脱)
・龍翔寺(京都府京都市北区 / 現在は大徳寺の塔頭)
鎌倉十刹 一覧(1386年制定時の順位)
・禅興寺(廃寺 / 現在の明月院の場所にあった)
・瑞泉寺(神奈川県鎌倉市)
・東勝寺(廃寺 / 北条氏滅亡の地)
・万寿寺(廃寺)
・大慶寺(神奈川県鎌倉市)
・興聖寺(廃寺)
・東漸寺(神奈川県鎌倉市)
・善福寺(廃寺)
・法泉寺(廃寺)
・長楽寺(廃寺 / 群馬県太田市にあった世良田長楽寺など諸説あり)
●諸山(しょざん) 十刹の下に位置する公認の一般禅寺。全国に数百寺存在しました。
- 本末制度
江戸時代のように国家が一律で義務付けた「本末制度」とは異なり、中世の「本末」は宗派の自発的な分派・師弟関係から生まれました。 全宗派(天台宗、真言宗、浄土真宗など)
本山(本寺) → 中本寺(地方の有力寺院) → 末寺(下寺) → 寺中・道場(法務補完)
弟子が地方へ散らばる:大本山(比叡山延暦寺、高野山金剛峯寺、建長寺など)で修業した僧侶が地方へ渡り、新しい寺(末寺)を開く。
本寺の権威の活用:地方の末寺は、大本山(本寺)の血脈や権威を背景にして地方での地位を確立する。
保護と補償:本寺は末寺から「本寺料(上納金)」を得る代わりに、地方での紛争や不当な課税に対して本寺(中央政治とつながる権力)がプロテクトをかける。
江戸時代:本山・末寺制度、寺格
本末制度(ほんまつせいど)
江戸時代に江戸幕府が全国の仏教寺院を統制するために定めた、お寺のピラミッド型の組織体系(上下関係)
大きな力を持つ寺院を「本山(ほんざん)または本寺」、その傘下に入る小さな寺院を「末寺(まつじ)」とし、この頭文字を取って名付けられました。
● 寺格に応じて決まるもの ・僧官、僧階の補任 ・座位(儀式での席次) ・装束(色衣など) ・寺号、院号の許可
寺格は宗派内の“官位制度”であり、寺院の身分を決める。
中世の自然発生的な本末関係を、幕府が法制化
全国の寺院を宗派ごとにピラミッド構造へ強制編入
本山は宗派の行政機関として強大な権限
末寺は本山に絶対服従
寺格は宗派内の身分制度として固定化
寺請制度と連動し、寺院は民衆統制の末端機関へ
仏教は“行政化・官僚化”し、葬式仏教化が進む
- 総本山、大本山: 宗派、教団の最高位または中心寺院
●天台宗:江戸への拠点シフト徳川家康・秀忠・家光の3代に深く帰依された僧・天海により、江戸の「寛永寺」が創建され、比叡山をしのぐほどの強い権力(三大本山)を持ちました。
・延暦寺(滋賀県比叡山):伝統的な総本山
・寛永寺(東京都上野):大本山(別格大本山)・江戸時代に新設。徳川将軍家の菩提寺・祈願所
・輪王寺(栃木県日光):大本山・日光東照宮(家康を祀る)を統括
●浄土宗:徳川家の菩提寺が台頭家康が浄土宗を信仰していたため、江戸の「増上寺」が破格の優遇を受け、京都の知恩院と並ぶ二大巨頭となりました。
・知恩院(京都府):伝統的な総本山
・増上寺(東京都芝):大本山・徳川家の菩提寺。関東の浄土宗寺院を統括する「総録所」として絶大な権力を持つ
●浄土真宗(一向宗):東西の分裂織田信長や豊臣秀吉との抗争を経て、徳川家康の時代に教団の弱体化を狙って「東」と「西」に分立させられました。江戸時代にはそれぞれ江戸に巨大な別院(拠点)を構えました。
・本願寺(西本願寺)(京都府):本願寺派の「本山」=事実上の総本山-(江戸の拠点)築地本願寺(東京都中央区)
・真宗大谷派本願寺(東本願寺)(京都府):大谷派の本山(正式名:真宗本廟)-(江戸の拠点)東本願寺浅草別院(東京都台東区)
●禅宗(臨済宗・曹洞宗):幕府による直接管理、禅宗は京都・鎌倉の五山とは別に、幕府が指定した大本山や、幕府の命令を伝える中継役(江戸触頭)が実権を握りました。
・曹洞宗(大本山):永平寺・大本山(福井県)と總持寺・大本山(当時は石川県)関東では関三刹(総寧寺・大中寺・龍穏寺)という3つの大寺院が末寺を支配しました。
・臨済宗(主な大本山):南禅寺(京都)、妙心寺(京都)など
●真言宗:古刹の法度による統制、弘法大師(空海)以来の伝統的な巨刹が本山として固定されました。
・高野山金剛峯寺(和歌山県):家康が最も早く「高野山法度」を出して統制した真言宗最大の拠点
・東寺(教王護国寺)(京都府):真言宗の伝統的な本山
●日蓮宗(法華宗):身延山久遠寺(山梨県身延山):日蓮宗の総本山。幕府の厳しいキリシタン・不受不施派(幕府の命令を拒絶する一派)の弾圧を免れ、公認の本山として繁栄しました。
- 門跡寺院 :皇族・公家などが住持する特別な格式の寺院、「門跡」格付け(5つのランク)
幕府は門跡寺院を、出身者の身分の高さに応じて5つに分類・固定しました。
① 宮門跡(親王門跡)天皇の皇子(法親王)が入寺する最高位の13ヶ寺。
・輪王寺 / 東叡山寛永寺(天台宗・栃木県/東京都) ※日光門跡・
・三千院(天台宗・京都府)(梶井門跡)
・青蓮院(天台宗・京都府)(粟田御所)
・曼殊院(天台宗・京都府)
・毘沙門堂門跡(天台宗・京都府)(竹内門跡)
・聖護院(天台宗/修験道・京都府)
・圓満院(天台宗・滋賀県)
・照高院(天台宗・京都府) ※江戸時代に宮門跡となったが明治に廃寺
・仁和寺(真言宗・京都府) ※御室門跡
・大覚寺(真言宗・京都府) ※嵯峨門跡
・勧修寺(真言宗・京都府)(山階門跡)
・知恩院(浄土宗・京都府) ※徳川家康の猶子となった良純法親王以降、宮門跡化
・妙法院 (天台宗・京都府)毘沙門堂跡
② 摂家門跡五摂家(近衛・九条・一条・二条・鷹司)の子弟が入寺するお寺。
・醍醐寺 三宝院(摂家出身の門跡が入る時期あり)
・随心院(真言宗・京都府)(門跡寺院で摂家出身が入る時期あり)
・蓮華光院(真言宗・京都府) ※安井門跡とも呼ばれる。明治に廃寺
③ 公方門跡(くぼうもんぜき)将軍家や足利氏など、武家の血を引く者などが入寺するお寺。
・一乗院
・大乗院(奈良・興福寺の門跡)
④ 清華門跡(せいがもんぜき)大臣になれる格式の公家(清華家)の子弟が入寺するお寺。
・実相院(天台宗・京都府)
・寂光院(天台宗・京都府)盧山寺(天台宗・京都府)
⑤ 准門跡(じゅんもんぜき)血統は皇族・公家ではないが、絶大な勢力を持つため門跡と同等の格式を認められたお寺。
・東本願寺(真宗大谷派・京都府)
・西本願寺(浄土真宗本願寺派・京都府)
・専修寺(真宗高田派・三重県)
・佛光寺(真宗仏光寺派・京都府)
・興正寺(真宗興正派・京都府)
・錦織寺(真宗木辺派・滋賀県) - 末寺: 本山または中本寺などに属する寺院 全国の寺院
- 寺格: 宗派内部、本末制度上の格式、序列 ・総本山、大本山・中本寺、小本寺・末寺など※宗派により異なる
明治時代:官寺・私寺の区別、寺院の本末・宗派制度
明治政府は神仏分離・廃仏毀釈を進め、寺院を国家の管理下に置く一方、最終的には各宗派が独立した宗教法人として寺院を組織する現在の形へ移行していきました。
官寺・私寺の代わりに、明治政府や法制度のもとで区別が行われました。
◎行政上の分類:「本山(ほんざん)」と「末寺(まつじ)」 政府は宗教行政を効率化するため、各宗派のトップである「本山」を通じて全国の「末寺」を統制する仕組み(管長制)を整えました。
・本山: 宗派の行政・教学の拠点。
・末寺: 全国各地にある一般の寺院。
十三宗五十六派(じゅうさんそうごじゅうろくはい)
・特別枠(官寺的扱い):旧宮門跡寺院など 宮内省や皇室からの特別な礼遇・下賜金・法要の公認。
・公認宗派の本山:各宗派の大本山(東寺、延暦寺、本願寺など) 「管長」が置かれ、宗派内の全末寺を管理統制する行政権を与えられる。
・公認宗派の末寺:全国の一般寺院 本山の傘下に入り、政府の許可のもとで宗教活動が認められる。
・無格寺・非公認 街道沿いの祠、小堂、新興祈禱所 :法的保護を受けられず、統合・整理(廃寺)の対象とされる。
日本の主要宗派:総本山・大本山一覧
現代:現代の寺院の「格」は、全国共通の一つのランキングではなく、宗派ごとに「総本山・大本山・本山・別格本山」などを定める方式
各宗派の
本山・大本山・総本山など