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名所めぐりは過去に行ったことのある土地の紹介です。

どこへ行ったのか忘れてしまうので独遊庵の名所めぐり

おいてけ堀 怪談

「置行堀」という池で釣りをしていると、魚を全て返してしまうまで「置いてけ、置いてけ」という声が聞こえてきたという話

江戸の町のお掘りに「おいてけ堀」と呼ばれるお堀がありました。そこで釣りをした人が帰ろうとすると、お堀から不気味な声で「おいてけ~」と言う声が聞こえるので、皆が魚を放り投げて帰ってしまうのです。
おいてけ堀
この噂を聞きつけた、ある魚屋のとっさまは「そんな物が怖くて魚屋が出来るけぇ」と威勢の良い啖呵をきり、女房が止めるのも聞かず、その堀に魚天秤を持ってねじり鉢巻で勇んで出掛けていきます。

さて、釣りを始めたとっさま。釣れるわ、釣れるわ。上機嫌です。しかし周囲は段々暗さを増し、冷たい風も吹いてきました。止せばいいのに、そのとっさまは後で仲間に自慢する為にキセルを一服します。「おらぁ、釣った後も、堀端でキセルを吸ってきたとね」

さて、いよいよ帰ろうと立ち上がったとっさまに、例の「おいてけ~」という不気味な声が聞こえてきました。とっさまは耳を塞ぎ「釣った魚をおいてけるけぇ」と啖呵をきり、そのまま逃走。声が聞こえない所まで来ました。

そこは柳の下でしたが、そこで立ち止まったとっさまの耳に「カランコロン」と下駄の音が聞こえてきます。
ハッと身構えたとっさまの前に現れたのは色も透き通る様な美人でした。その美人はこう言います。「その魚を売ってくださいな」。しかしとっさまは「皆に見せるまでは誰にも売らねぇ」と言い張ります。すると女は「これでもかえ?」と言って顔を撫でると、何と「のっぺらぼう」になってしまいました。驚いたとっさまは魚の天秤を投げ出して逃げていきます。
おいてけ堀
そして辿り着いたのが、ニ八そばの屋台。そば屋の主人に震えながら事の詳細を話すと、振り向いたそば屋も何と「のっぺらぼう」。とっさまは悲鳴をあげて腰が抜けた状態で逃げていきます。

這う這うの体(ほうほうのてい)で家に着いたとっさま。女房が「どうしんだえ?お前さん」と聞くので、「出たんだよ~、あれが~!」と言います。「あれがじゃ分からないよ。でも出たってのは、こんなやつじゃなかったかぇ?」と顔を一撫ですると、何と女房までが「のっぺらぼう」に。
腰を抜かしたとっさまは、その場で気を失ってしまいました。ところが、とっさまが倒れていたのは自分の家ではなく、例の女と出会ったお堀端の柳の木の下でしたとさ。

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