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真言宗(しんごんしゅう)

真言宗は、弘法大師・空海が平安時代初期の806年(大同元年)に唐から帰国し、真言密教を伝えたことに始まります。
宇宙の真理そのものとされる大日如来を本尊とし、「即身成仏」すなわち、今の世で仏の境地に至ることを目指します。そのために「三密」と呼ばれる身・口・意の修行を行い、宇宙の真理を体得することを目的としています。
人の心のあり方や価値観などを10の段階に分け、最終的に大日如来と同レベルに達することを説く。「十住心思想」

お題目
南無大師遍照金剛
(なむだいしへんじょうこんごう)
南無(なむ):サンスクリット語の「namo」が語源で、「あなたにおまかせします」「帰依します」といった意味があります。
大師(だいし):弘法大師(空海)を指します。
遍照金剛(へんじょうこんごう):空海が中国で密教を極めた際に、恵果和尚(けいかかしょう)から授けられた灌頂名です。また、大日如来の別名でもあり、「太陽のようにすべてを照らす慈悲」と「仏のような智慧の持ち主」を意味します。
  • 開祖:空海(弘法大師)中国の長安で青龍寺の恵果(けいか)から密教を学び、日本に伝えて日本で独立した宗派として立てられたのが始まりです。
  • 本尊:大日如来・宇宙の真理そのものである大日如来を本尊としています。 釈迦如来をはじめとするあらゆる仏や菩薩は、根本である大日如来の変化した姿であると考えます。
  • 本山:宗派によって異なる。一般には高野山の金剛峯寺(高野山真言宗)
  • 発展:平安仏教の中心となり、高野山金剛峯寺を根本道場として栄えました。
  • 経典:主に『大日経』や『金剛頂経』を拠り所とします。
  • 密教:師から弟子へ口伝で教えや儀礼を受け継ぐ密教(秘密の教え)が特徴。
  • 即身成仏:仏の言葉を体得すれば、生きながらに仏になれるという考え方。
  • 三密修業:身密(身体の修行)、口密(言葉の修行)、意密(心の修行)の3つを合わせた密教の修行を行います。
  • 三密加持(さんみつかじ): 身体(身)、言葉(口)、心(意)の3つの働きを仏の働きと一致させる修行を行うことで、悟りを開きます。
  • 曼荼羅(まんだら)の重視: 言葉では表現しきれない密教の世界観や覚りの世界を図解・絵画化した「両界曼荼羅」を用いて修法を行います。
六大縁起(ろくだいえんぎ)とは、真言宗(密教)の開祖である弘法大師・空海が唱えた宇宙の万物・現象の根源を構成する6つの要素「地・水・火・風・空・識(ち・すい・か・ふう・くう・しき)」が、互いに影響し合い、融合しながらこの世界を形作っているという教えです。空海が大成し、物質だけでなく人間の精神を含めた全宇宙が大日如来の現れであるとする根幹的な思想です。
  • 地(ち):堅さや重さ、物質の土台
  • 水(すい):湿り気やまとまり、流動性
  • 火(か):温度や熱、成熟の働き
  • 風(ふう):動きや呼吸、空気の流れ
  • 空(くう):空間や、固定化されない柔軟性
  • 識(しき):認識や精神、気づきの働き
最初の4つ(地・水・火・風)に「空」を加えたものは古代からありましたが、そこに精神の働きである「識」を加えることで、物質だけでなく人間の心や仏を含めた全宇宙を説明する枠組みとなっています。
六大は互いに妨げなく働き合う(無礙) 固体(地)だけでは存在できず、流動(水)や熱(火)、動き(風)、空間(空)、認識(識)が相互に依存して成立する。 どれか一つが独立して存在するのではなく、六つが縁となって万物が成り立つ。
仏も衆生も六大を本体とする(六大体大) 真言密教では、大日如来も人間も六大で構成されるため、本質的に同一の体性を持つと説く。 これが「即身成仏」の理論的基盤となる。

真言宗は、大きく分けて古義真言宗と新義真言宗の2つに分かれます。
教義上の主な違いは、大日如来の説法に関する考え方です。古義真言宗では「本地身説法」を説き、大日如来自身が説法すると考えますが、新義真言宗では「加持身説法」を説き、大日如来が加持身となって説法すると考えます。
  • 本地身説法 (古義真言宗):大日如来がそのまま説法を行うという考え方。
    ・主な特徴と教義教義(本地身説法): 宇宙の真理そのものである「大日如来(本地身)」が直接説法を行うとする立場をとります。(対する新義真言宗は、大日如来が人々に説くために現した「加持身」が説法するという「加持身説法」を主張します)
    ・中心的な拠点: 弘法大師が開いた高野山(金剛峯寺)や東寺(教王護国寺)などを中心として発展しました。
  • 加持身説法 (新義真言宗):大日如来が衆生を救うために姿を変え、説法を行うという考え方。
真言宗は曼荼羅や呪文を重視する。数多くの分派が存在し、「真言陀羅尼宗」や「曼荼羅宗」、「秘密宗」などとも呼ばれている。

飾り方:中央に「ご本尊」である大日如来を配置し向かって左側に「両界曼荼羅」、右側に弘法大師と不動明王となる。

真言宗の宗派
大きく「古儀真言宗」「新義真言宗」「真言律宗」の3つに分類されます。
16以上の主要宗派が存在。
高野山金剛峯寺を本山とする高野山真言宗、根来寺を本山とした新義真言宗、さらにそこから分かれた真言宗智山派、真言宗豊山派など、複数の宗派に分かれています。


関連

  • 大日経(だいにちきょう)は、空海が伝えた真言宗の根本経典の一つで、正式名称は『大毘盧舎那成仏神変加持経』。大日如来が説く宇宙の真理や、印・曼荼羅(胎蔵界)を用いた実践的な修行法を記し、自己の内なる仏性に目覚めて即身成仏を目指す教えを説いた経典です。
  • 金剛頂経(こんごうちょうぎょう)は、真言密教の根本経典「両部の大経」の1つで、金剛界曼荼羅の教理(大日如来の智慧)を説く経典です。この世のあらゆる事象が如来の智慧(金剛)であることを明かし、修行によって即身成仏を目指す「五相成身観」という観法が説かれています。
  • 加持身(かじしん)とは、密教(特に新義真言宗)において、本来形のない法身(大日如来)が、衆生(人々)を救済し教えを説くために、加持力(仏の不可思議な力)によって現した姿のこと。自性身(本来の本体)が方便として現した姿であり、加持身説法(かじしんせっぽう)とも呼ばれ、私たちが目にする仏像や如来の姿などがこれに当たります。
  • 加持身説法(かじしんせっぽう)とは、密教(特に新義真言宗)において、真理そのものである大日如来(自性身)が、衆生を教化するために、慈悲に基づき姿や形を現して(加持身)、教えを説くこと。空海が唱えた「法身説法」の解釈を巡り、鎌倉時代に頼瑜(らいゆ)が唱えた説である。
  • 本地身説法(ほんじしんせっぽう)とは、真言宗(特に古儀真言宗)において、宇宙の根源である大日如来(法身・本地身)が、姿や言葉を超越した真理そのものの姿で、直接説法を行っているという教義です。山川草木など一事一物すべてが仏の教え(真理)を現しているとする考え方です。
  • 十住心(じゅうじゅうしん)思想とは、空海(弘法大師)が『十住心論』や『秘蔵宝鑰』で説いた、人間の心を10段階のレベルに分類した真言密教の根本的な思想体系です。本能的な凡夫の心(第1)から、最高峰の悟りである密教の境地(第10)までを、他宗派の教えも含めて体系的に整理・配置したものです。
  • 真言密教(しんごんみっきょう)とは、平安時代に空海(弘法大師)が唐から持ち帰った、大日如来を本尊とする密教教団(真言宗)の教えです。「即身成仏(生きたまま仏になる)」を掲げ、印・真言・瞑想という「三密」修行を通じて、人間が本来持つ仏性を目覚めさせる神秘的な仏教です。
  • 両界曼荼羅(りょうかいまんだら)は、真言密教の根本教義である「金剛界」と「胎蔵界」の2つの世界を、仏や菩薩の配列で視覚化した一対の曼荼羅。空海が唐から伝えた「現図曼荼羅」が基本で、大日如来の智慧と慈悲、宇宙の森羅万象を表現し、密教の修法(儀式)における本尊として不可欠なものです。
  • 金剛界(こんごうかい)は、密教(特に真言宗)において、大日如来の「智恵」や「堅固な意志」を具現化した世界観を表す言葉です。ダイヤモンドのように決して砕けない真理の智恵(金剛)を指し、胎蔵界(慈悲)と対になる概念で、計9つの区画からなる「金剛界曼陀羅(九会曼荼羅)」として視覚的に表現されます。
  • 胎蔵界(たいぞうかい)とは、密教において大日如来の慈悲が無限に広がり、すべての衆生を慈しみ育てる様を、母胎に宿る子供になぞらえて表現した世界観。『大日経』に基づき、理(理想)と慈悲を象徴し、理法が万物に浸透する様子を描いた「胎蔵界曼陀羅」としても知られる。
  • 霊山寺真言宗とは奈良県奈良市にある「霊山寺(りょうせんじ)」を総本山とする単立宗教法人、およびその宗派です。奈良時代に創建された古い歴史を持ち、かつて主流だった法相宗(ほっそうしゅう)と、弘法大師・空海が伝えた真言宗の「二宗兼学」を現在も守り続けている点が大きな特徴です。
  • 密厳国土(みつごんこくど)とは、真言密教において説かれる最高の理想郷(仏の悟りの世界)のことです。単に「密厳浄土(みつごんじょうど)」や「密厳世界」とも呼ばれます。
    主な特徴と教義上の意味
    ・大日如来(だいにちにょらい)の住処 :密教の根本尊である「大日如来」が住し、永遠の真理の説法(法身説法)を行っている絶対的な覚りの世界です。
    ・「現世(今生きているこの世界)」と地続きの理想郷: 他宗派(浄土宗など)における「極楽浄土」が“死後に向かう遠く離れた彼方の世界”とされることが多いのに対し、密教の「密厳国土」は「この現世(現実に生きている世界)のあり方を変革した姿」と捉えます。
    ・密厳国土を開く(密厳浄土の建設) :自分が密教の修行によって悟りを開き(即身成仏)、身も心も浄化されることで、「いま自分が生きているこの世界・この場所こそがそのまま密厳国土(仏の浄土)である」と実感・体現できるようになると説かれます。
  • 顕密二教(けんみつにきょう)とは、日本仏教(特に真言密教)において、すべての仏教の教えを「顕教(けんぎょう)」と「密教(みっきょう)」の2つに大別する分類法(教判)のことです。
    弘法大師空海が『弁顕密二教論(べんけんみつにきょうろん)』の中で体系化し、密教が顕教よりも勝れている理由を理論づけました。
    1. 顕教(けんぎょう) 意味:「顕(あら)わにされた教え」
      ・説法者:応身仏(歴史上の釈迦如来など、人々の姿に合わせて現れた仏)
      ・特徴: 人々の理解能力やレベル(機根)に合わせて、言葉や文字で分かりやすく説かれた教え。
      悟りを開くまでには、無量劫(途方もなく長い時間)の修行が必要とされる。
      ・該当する主な宗派:法相宗・三論宗・華厳宗・天台宗・浄土宗・禅宗など(密教以外の諸宗派)。
    2. .密教(みっきょう) 意味:「秘密の奥深い教え」
      ・説法者:法身仏(宇宙の真理そのものである大日如来)
      ・特徴: 大日如来が自ら悟った真理の境地を、そのまま説き明かした教え。
      言葉だけでは伝えきれないため、手で印を結び、真言を唱え、心に仏を観想する「三密加持(さんみつかじ)」の実践を通じて体得する。
      長い時間をかけず、この身このまま直ちに悟りを開くことができる(即身成仏)。
      ・該当する宗派:真言宗(東密)、天台宗の密教(台密)。
    空海が明かした顕密の違い(判教) :空海は『弁顕密二教論』において、顕教と密教の決定的な違いを「説法する仏の違い」と「悟りに至るスピード(即身成仏の可否)」に見出しました。
    ・顕教:仏が相手の能力に応じて「噛み砕いて教えた」仮の教え(応身説法)。
    ・密教:仏が自分自身の悟ったありのままの真理を「そのまま示した」究極の教え(法身説法)。
    このように、仏教全体を「顕教」と「密教」に分類した上で、密教こそが最も深く完全な教えであると位置づけたのが「顕密二教」の根幹です。
  • 事相教旨(じそうきょうし)とは、密教(真言宗など)において、教えの実践・儀礼的な側面である「事相(じそう)」に関する、修行の具体的な手順、方法、その奥義を伝える「教旨(教えの旨・本質)」のことです。
  • 宝号(ほうごう)とは、仏・菩薩・明王・天などの名前に対する尊称で、特に真言宗において「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」のように、仏への帰依を示す言葉を指します。これは仏の功徳を称える「名号」の別称であり、主に「南無(なむ)+仏の名前」という形式で唱えられます。
  • 真言宗室生寺派は、奈良県宇陀市にある古刹「室生寺」を大本山とする真言宗の宗派です。高野山が女人禁制だった時代から女性の参拝を許可していたことから、「女人高野」として広く知られています。
  • 高野山真言宗
    東寺真言宗
    真言宗善通寺派
    真言宗醍醐派
    真言宗御室派
    真言宗山階派
    真言宗泉涌寺派
    真言宗大覚寺派
    真言宗豊山派
    真言宗智山派
    新義真言宗
  • 7番札所 光明山 蓮華院 十楽寺・徳島県
  • 56番札所 金輪山 勅王院 泰山寺・愛媛県
  • 62番札所 天養山 観音院 宝寿寺・愛媛県
  • 88番札所 医王山 遍照光院 大窪寺・香川県